人生80年、8億回の呼吸

 

 安静な状態で私たちは一分間に約一五~二〇回の呼吸をします。いま、かりに二〇回とすると、1日では約三〇万回、一年で約一〇〇〇万回になります。平均八〇年回の人生ではその数は八億回です。成人で平均一回の呼吸量は約〇・五リットルですから、一生ではその量は約四億リットルです。運動をしたり通勤の途中で走ったりすれば、さらに多くなるでしょう。人数が増えると毎日、必要な空気の量は膨大になります。東京都の人口一一〇〇万人が一日に必要とする空気の量は、じつに東京ドーム約一四〇杯分。日本全国ではこのI〇倍。空気を吸って命を保っているのはもちろん人間だけではありません。一人一人の空気の必要量はさほど多くありませんが、共用している空気はじつに膨大な量になってしまいます。

 現在、地球上の海、川、湖沼などにたくわえられている氷、地下水や、氷河、大気中の水蒸気などに含まれる水の総量は約一四億立方キロメートルといわれています。その量は恐竜が歩き回っていた太古の頃とはほとんど変わらないともいわれます。同じことが空気についてもいえます。地球上の空気はけっして無限ではなく、地球の表面をわずかに被っている空気を、すべての生物体が共有して呼吸しているのです。酸素を摂取して二酸化炭素を排出しているのですが、その二酸化炭素を利用して酸素を放出してくれる生物体もまた共存しているのです。私たちが子どもの頃、二五年ほどで世界の石油の埋蔵量を使い尽くしてしまうといわれていました。深海からも採掘できるようになり、利用できる年月は伸びましたが、いずれにしても有限であることには変わりありません。空気は幸いなことに、このまま人口が増えていっても足りなくなって取り付け騒ぎがおこるということはなさそうです。

 肺の機能を測る

 肺に病気がおこると、本来なすべきはたらきができなくなります。肺のはたらきが異常であるかどうか、また異常のていどを知るための検査があります。病気になると、肺から十分に空気を吸いこむことも、排出することもできなくなります。肺機能検査は、空気が円滑に気管支を通ることができるか、そこを通過する速さは保たれているか、最大どのくらいの空気の取り入れが可能か、また自分が一番、がんばって息を吐吉出した状態でなお肺の中にどのくらいの空気が残存しているか、肺胞まできた空気からどのように能率よく酸素を毛細血管まで取り入れることができるかなど、病気の診断や治療の方針を細かく決めていくうえで欠くことのでき