エクリン汗器官起原性腫瘍

 

 エクリン汗器官の各部から種々の分化を示す腫瘍で、 CEA陽性のことが多い.

 1.エクリン汗嚢腫eccrine hidrocystoma

 温熱環境中で生ずる粟粒大の透明な嚢腫状丘疹ないし小水疱で多汗症の中年女性の顔面〔とくに眼囲〕に多い.エクリン汗管の貯留嚢腫.

02.エクリン汗孔腫eccrine poroma

 足底を主とし〔2/3〕、手掌、まれに四肢・体幹にも発する単発l生の広基性ないし有茎性の小結節.表皮内汗管部(acrosyringium)の腫瘍性増殖で、周囲正常表皮とは明瞭に境された小円形単一な細胞増殖巣があり、中に汗管を想わす管腔ないし裂隙を有する〔Pinkus型1956].腫瘍細胞は多量のグリコーゲンを含み、コハク酸脱水酵素・フォスフォリラーゼ陽性.表皮内増殖〔Jadassohn現象〕を来したものをhidracanthoma simplex 〔Smith-Coburn 1956〕といい、表面やや角化性で下肢に好発する.真皮方向に増殖し、多少の異型性の認められるものをeccrine poroepithelioma、異型性が高く浸潤性増殖を示すものをeccnne porocarcinoma という.

 3.エクリン汗管腫瘍eccrine dermal duct tumor 〔W inkelmann-McLeod 1966〕

 真皮内導管部に発した腫瘍で、小腫瘤または皮内の硬い小結節. eccrine ducto-adenoma とほば同義.真皮内に表皮と連続しない腫癌塊があり腫蕩細胞は単一で管腔を形成する.

4.エクリンらせん腺腫eccrine spiradenoma [Kersting-Helwig 1956]

 直径1~2cm の境界明瞭な、硬い皮内・皮下結節.表面は正常または青色、自発痛・疼痛がある.単発が多い.顔・頚・体幹・上肢に多く下肢に少ない.腫瘤部にアセチルコリン注射で疼痛を生じ、これはアトロピンで消失し、一方アドレナリンでは生じない.腫瘍は索状・塊状に増殖、管腔構造を有し、大形・円形・クロマチンに乏しい核を有する細胞が中心部を、小形・クロマチン豊富な核を有する細胞が外側を形成、結合組織の被膜に囲まれ、腫瘍閧質に多くの無髄多軸索線維がみられる.まれに悪性化(malignant eccrine spiradenoma、 eccrine spirocarcinoma).

5.汗管腫syringoma

 〔症状〕直径1~2mm大、扁平隆起性黄褐色小丘疹で、下眼瞼あるいは体幹〔前胸・腋窩・腹部・外陰]に多発.思春期に著明となり、女子に多い〔付図26-8〕.体幹多発型をeruptive hidradenoma 〔Hashimoto 1967〕ともいう.

 〔病因〕優性遺伝.エクリン真皮内汗管の増殖.

 [組織所見]真皮上中層に、大小の管腔構造を有する上皮索、嚢胞状管腔の一端に短い尾のような細胞索が付き、このオタマジャクシ様(tadpole-like)外観が特徴的.管腔は2層の壁細胞より成る.周囲に結合組織の増殖.グリコーゲン蓄積で壁が澄明細胞巣となることがある[clear cell syringoma].