乳頭状汗管嚢胞腺腫、澄明細胞汗腺腫

 

6.乳頭状汗管嚢胞腺腫syringocystadenoma papilliferum

 従来はアポクリン汗器官性と考えられていたが、 Pinkus-Mehregan〔1969〕は、脂腺母斑に合併せずかつアポクリン汗腺構造を欠くもののあることから、エクリン乳頭状汗管嚢胞腺腫の存在をも指摘した〔c≪-p. 396〕.

7.澄明細胞汗腺腫clear cell hidradenoma 〔Kersting-Helwig 1963〕

   〔同義語〕nodular hidradenoma 〔Lund 1957]、 eccrine sweat gland adenoma of the clear cell type 〔O'Hara 1966〕、 solid-cystic hidradenoma 〔Winkelmann-Wolff 1967〕、 eccrine acrospiroma〔Johnson-Helwig 1969〕、 eccnne acrospiroma、 eccrine duct epithelioma of clear cell type 〔Mishima_Morioka〕.   〔症状〕0.5~3cmの単発性結節で半球状に隆起または皮内結節として触れる.体幹に多いがいずれにも生ずる.まれに多発.

 〔組織所見〕澄明な原形質の細胞が不規則塊状~房状に集簇、その中に管状管腔や嚢腫が多数みられ、腫瘍細胞は上記澄明細胞〔グリコーゲンに富む〕と、より好塩基性の紡錘形細胞〔張原線維を有する〕とから成り、管腔は円柱状~角形の細胞が壁を成す部分が多い.

 〔病因〕エクリン汗器官〔分泌部より表皮内導管に至る〕の種々の要素を有する腫瘍

 悪性澄明細胞汗腺腫(malignant clear cell hidradenoma)は本症の悪性化ではなく、はじめより悪性腫蕩として発する.悪性像を示すのは澄明細胞要素.

8.いわゆる皮膚混合腫瘍mixed tumor

 〔症状〕青成年の主として鼻・頬・上口唇・頭部に発する、比較的硬い腫瘤で、皮膚と癒着し下床に対しては可動性あり.軟骨様汗管腫chondroid syringoma〔Hirsch-IIelwig 1961〕ともいう.

 〔組織所見〕2型あり.

 1)管状・嚢腫状構造を主体とするもの:大小の分枝状管状~嚢腫状構造.管腔側に四角形の、外側に扁平な細胞があって管腔を形成、さらに管腔形成なく上皮性細胞が充実性に増殖する部分もある.実質は粘液様で好塩基性〔アルシャン青・ムチカルミンアルデヒドフクシン陽性、トルイジン青異染性、酸性ムコ多糖類〕.散在する線維芽細胞の周囲が間質物質収縮で白く抜け、軟骨組織のようにみえる.

 2)小管状構造を主体とするもの:1層の扁平な細胞を壁とする小さな管腔が、粘液様基質巾に散在する.

 〔病因〕エクリン・アポクリン汗器官由来の両説があるがエクリン説が強い.分泌部より真皮内汗管移行部に分化する傾向を有する腫瘍か.

   構造は、エクリン澄明細胞汗腺腫と共通するので両者を一括するものもある

  〔Lund〕.また問質の粘液様変性は上皮細胞により生ずるのでmucinous hidradenomaと称する人もある.