アンチセンスRNAとコードブロッカー

 

 アンチセンス(antisense) RNAとは, mRNAと相補的(逆向き)な塩基配列を持たせ,細胞内に極微のガラス針を通して注入し,本来のmRNAとハイブリッドを形成させてタンパク質への翻訳を阻止する役割を持たせ九分子のことである.実際にはKNAは細胞内に注入しても,リボヌクレアーゼによりすぐに分解されてしまうため実用的でない.そこでホズボンエステル結合をチオリン酸ジェステル結合に改変したり, 2'-0H基を修飾したりして分解から保護する工夫がなされている.さらにホスホジェステル結合を,電荷を持たないメチルホスホネート基で置換し,細胞膜を通過しやすくして,細胞内導入の効率を高める技術も開発されている.標的mRNAの特定の領域に,相補的な塩基配列を持つ人工的に化学合成した20塩基程度の小さなRNA分子は,アンチセンスオリゴマーとも呼ばれ,効率よく高い特異性を持って標的mRNA力1タンパク質に翻訳されるのを防へ これらアンチセンスRNAは,塩基配列はわかっているか機能が不明な遺伝子の生理機能を解析できるのみでなく, RNAウイルスの増殖阻害を目的とした医薬品としても注目を浴びている.

 

 一方,アンチセンスオリゴマーは標的DNAに対してもハイブリッドを形成できる.この場合,適当な条件下では標的となる塩基配列の領域で三重鎖構造をとり,遺伝子の転写を阻害することもできる.このような分子はコードブロッカー(code blocker)と呼ばれ,標的遺伝子の転写を阻害できる医薬品としての応用も試みられている.