ケラトアカントーマkeratoacanthoma

 

 〔同義語〕molluscum pseudocarcinomatosum

 〔症状〕

 1)中央腋窩を有する角化性丘疹で、比較的急速に増大、形は噴火口に似(crateriform)、角栓を容れ、周囲には糺暈をめぐらす.

 2)大部分が顔面に生じ〔90%以上〕、頚・前腕・手背がこれに次ぎ、単発、まれに多発.中年以降の男子に多い.

 3)一定の大きさ〔2cm径ぐらい〕に達すると進行を停止し、数力月つづいてしばしば自然退縮を示す.

 4)単発型はときに巨大化〔径2~3cm〕し、これは自然退縮傾向に乏しい.

 5)多発型は若年者に生じ家族内発生もあり、自然退縮傾向が大.

 〔病因〕毛包性良性腫瘍で、その発育退縮を毛周期と一致、特異的自己免疫発生、HPV免疫発生と関係づけて考えるひともある.その他、日光・タール・油・外傷・素因〔先天性因子、アトピー性皮膚炎・色素性乾皮症などの先行〕の関与も考えられる.

 [組織所見]中央に角化増殖を有し、これを包むように表皮増殖がありpseudocarcinomatousな、すなわちlow-giadeの癌性変化がみられる.基底膜は正常に保たれ侵襲像はない.腫瘍下の細胞浸潤はリンパ球のほかかなり好酸球がみられる.

 〔診断〕上記のような組織所見なので、生検のさい腫瘍の全割面が入るように採らないと有棘細胞癌と区別が難しい.

 〔予後〕転移せず、自然退縮もあって予後良好.

 [治療]①放置して自然退縮を待つのも一法であるが、有棘細胞癌と鑑別するため、生検[かさければ全摘]する.②放射線療法:軟X線を少量照射.③ステロイド剤外用ないし局注.④ブレオマイシンの局注または軟膏として塗布.⑤エトレチネート内服.

   multiple primary self-healing squamous cell carcinoma 〔Smith〕〔若年者・多発・大きい・体幹や粘膜にも発生・長期反復・家族性発生〕とtumor-like keratoses〔Poth〕〔多発・日光や火熱照射に続発・手背前腕に多い.家族性発生なし〕は細かい点では異なるがケラトアカントーマの1異型としてよい.