癌による各器官の症状

 呼吸器の症状

 咳、痰、とくに血痰、感染を伴えば発熱、呼吸困難、胸の痛みなどが代表的な症状である。脯がん、縦隔腫瘍、転移性肺がんなどがこれらの症状の原因となる。特殊な脯がんが、腕を支配する神経やその付近の肋骨などに広がると、腕の痛みや頸の付け根に腫瘍を認めることもある。嗄声といって声がしわがれたり、顔が腫れてきたりするのも、脯がんや縦隔腫蕩が進行した場合の重要な症状の一つである。

 頭頸部の症状

 囗の中、鼻や咽頭、喉頸、食道上部、甲状腺などに発生するがんば、頸頸部がんとして一括されている。喉頭がんや声帯がんでは嗄声が重要な症状で、電話で声を登録して、コンピューターによる声紋分析から喉頸がんの診断をしようとする試みすらある。舌になかなか治らない潰瘍ができたり、鼻麻が出たり、咽頭部の痛み、甲状腺にしこりを触れたり、頸や顔全体が腫れてくることもある。

 乳房の症状

 乳がんば女性の代表的ながんの一つであるが、数は少ないが男性にも乳がんが発生すること もある。乳房にしこりを触れることが重要な症状である。女性の場合に自己検診が勧められるのは、簡単な方法で、定期的に注意を払うことによって乳がんを発見する有効な手段となるからである。乳房の形の変化、とくに左右の大きさの違い、乳房の皮膚にくぼみができたりしわがよったり、乳頭から血性の分泌液が出る、なども重要な症状となる。

 泌尿器の症状

 血尿-尿に麻が混じるiは代表的な症状で、膀胱がん、腎がん、腎盂がん、尿管がん、前立腺がんなどがその背景となる病気として多い。膀胱の刺激症状、たとえば排尿した時の痛みや尿が近い(頻尿)、尿が出切らないで残っているような感じ(残尿感)も膀胱がんの症状の一つである。排尿困難や脚の神経痛のような痛み、腰痛などは進行した前立腺がんに多い。尿がなかなか出ない、排尿しおわるのに時間がかかる、など排尿困難をきたす病気としては前立腺肥大症のほうがはるかに多いが、症状の上では前立腺がんと区別はつかない。十代後半から四十代前半の男性で、睾丸が片方だけ痛みもなく腫れてきたり、しこりを触れる場合は睾丸腫瘍の疑いもある。

 婦人科の症状

 おりもの、とくにおりものに血が混じるのは子宮頸がんの重要な症状の一つである。卵巣がんば症状が出にくいがんの一つであるが、進行すると下腹部にしこりを触れたり、腹水がたまるためにお腹が張った感じなどが現れる。子宮がんが進行してリンパ節に転移すると、リンパ液の流れが障害されるため下肢の腫れや浮腫なども生じる。

 皮膚の症状

 何といってもホクロが重要で、ホクロが悪性化した悪性黒色腫は日本人の場合、足の裏や指趾の間、顔などに多い。ホクロは色、形、大きさの三つの変化に注意するとよい。褐色だったものが最近黒くなっていないが平べったかった形、凹凸不整になっていないが大きさが増していないがなどに注意を払うことが大切である。