2014-06-12から1日間の記事一覧

大学病院で研修する医師が減っている

かつての大学医学部での研修医と現在の研修医たちのあいだにはどういう変化があるのだろうか。 この点については、研修医をとりまく医療環境と世代的な変化の両面から見なければならないのだが、メディアの側も積極的にこの変容について報じるようになってい…

いじめぬかれた稲田竜吉

青山胤通が他界したのは、大正六(一九一七)年である。後継者が誰になるか、それが青山派の教官たちの関心事であった。当時、京都・九州・東北・北海道に帝国大学があり、全国には医学校も数多くあった。そこに青山派の人脈がぞくぞく送りこまれていたが、…

東大医学部

東大医学部は、昭和三三年に一〇〇年祭を行っている。このときに『東京大学医学部百年史』を刊行しているのだが、この一〇〇年史は、単にきれいごとのみを羅列しているだけではない。開校前後は詳述してあるのに、年を追っていくほどに記述量は少なくなる。…

大量化学療法と骨髄移植、末梢血幹細胞移植

抗がん剤がよく効くがんで、しかし普通の量の化学療法では治せないようながんに対して、通常量の三倍から十数倍の抗がん剤を投与して治そうとする治療法である。急性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫などが主な対象である。乳がんや睾丸腫瘍にも使わ…

抗がん剤の投与方法

がん患者さんに抗がん剤を投与する方法は、その目的によって次に示すようないろいろな場食がある。何をめざしてどんな投与法が考えられているのかについて、触れておきたい。 がんが局所的にもかなり進行しており、ときには転移を伴っていれば普通は手術の対…

抗がん剤の副作用とその対策

抗がん剤ぽがん細胞を死滅させるのが目的で使われるのだが、正常細胞にもその作用が及ぶ。とりわけ細胞分裂のさがんな正常細胞、たとえば骨髄細胞、消化管の上皮細胞、毛根細胞などが抗がん剤の作用を強く受けることになり、それが抗がん剤の副作用につなが…

化学療法が有効ながん、効きにくいがん

化学療法に対する反応性はがんの種類によって大きく異なる。また同じがんの中でも、生物学的にはまったく異なった疾患として取り扱ったほうがよいものがある。たとえば肺がんの中の小細胞がんと非小緇胞がんがある。非小緇胞がんに分類される扁平上皮がん、…

 抗がん抗生物質

抗がん抗生物質 カビなどの微生物が作り出す物質でヽ他の菌の増殖を阻止する物質を抗生物質と呼ぶがヽこ れらの中にがん細胞の増殖を抑える作用をもつ物質が見出されている。アクチノマイシンは一九四〇年に発見された。またイタリアの研究者によってアンい…

抗がん剤の歴史:アルキル化剤、代謝拮抗剤

抗がん剤の歴史 白血病は白血球に分化する細胞が悪性化した、白血病細胞の増殖による病気である。その細胞はやはり一種のがん細胞で、血液を通じて全身をめぐっている状態である。脾臓など一つの臓器に停滞して増えることもある。悪性リンパ腫も同様で当初か…

放射線治療の今後

放射線治療は外科治療、化学療法とならんでがんの主要な治療法であるが、わが国では必ずしもその威力が発揮されていないきらいがある。放射線治療装置は一般に大型で高価なものが多いが、多数の医療機関に散らばって配備されており、一施設での治療患者数が…

重粒子線治療

千葉県下の放射線医学総合研究所では第一次対がん十ヵ年総合戦略の一環として、科学技術庁が約三百億円をかけて重粒子線治療施設を導入した。一九九七年二月にはそのための病院も新設され、研究のスピードアでフがはがられている。重粒子線治療は、陽子より…

陽子線治療

がんの部分だけに必要な量の放射線をかけ、周囲の正常組織にはなるべく放射線がかからないような、つまり副作用、障害を減らす新しい技術として注目されているのが陽子線治療、重粒子線治療である。 陽子線治療に使われる陽子は水素の原子核で、サイクロトロ…

放射線治療の効果と副作用:晩発障害

効果と副作用 がんの多様性は放射線治療の効果にも現れ、放射線療法がよく効く悪性リンパ腫やセミノーマ、中程度の効果を示す頭頸邵がんや子宮頸がん、逆にほとんど効果が期待できない肉腫などがある。相手となるがんの性質や広がりをよく見極めて放射線治療…

放射線療法の実際

放射線の種類 がんの局所療法としてもう一つ大切な治療法が放射線療法である。使われる放射線は、身体の中を通過する際、通り路にある組織、細胞に電離作用を示す。 放射線にはそのエネルギーによって大きく分けると、電磁波放射線(X線やγ線)と、質量のあ…

体腔鏡手術

体腔鏡手術も導入されてきた。先に述べた内視鏡手術は、身体の中の食道とか大腸などの管や胃や膀胱など袋の部分に内視鏡を挿入して目標の病巣を切除する方法である。一方、体腔鏡手術はおもに胸腔や腹腔を対象として行なわれる新しい方法である。胸やお腹に…

内視鏡手術

伝統的な開放手術に対して、内視鏡手術も近年はさがんである。質の高い早期診断ができるようになったことがんの生物学的性質が事前によく把握できるようになったこと、医用工学の進歩で内視鏡や周辺技術が進歩したこと、患者さんの負担を最小にとどめてがん…

機能の温存と再建

手術療法はがんが発生した臓器を取り除けばすむ場合と、取り除いだ後、再建が必要な場合とがある。前者の代表は甲状腺や、腎臓、子宮などであり、後者の代表は消化管辛頭頸部、膀胱や前立腺などをあげることができる。後者の場合、食物の通り路を再建したり…

開放手術

伝統的な手術療法は開放手術といって、メス、ハサミ、ピンセッいを主な道具として患部に到達する。解剖学的な層の概念に従ってがんが発生した臓器をとりまく何重もの膜構造を分離して、最適の層でがん細胞をこぼすことなく、露出しない形で切除する。術者と…

医療者の高いモラル

がん告知は医事紛争を避ける目的でなされるものでもないし、患者さんをいたずらに不安に陥れるために行なわれるものでもない。ひとえに、正しい情報にもとづく、その患者さんの病態に応じた最適の治療が進められるために行なわれるものである。そのためには…

患者さんと医師の信頼関係

患者さんと医師の信頼関係はすべての医療行為の根底にあるべきものだが、質の高いがん告知を目指す際にはとりわけ大切である。がんの手術療法は患者さんの身体を傷つけてでも、病気を治そうとする行為である。放射線療法は直接には目に見えないが、やはり患…

がん告知の個別性について

がんの告知 がんの診断が構密になると、治療の選択肢も多くなる。選択の前提として患者さん本人が自分のがんの病状を正確に理解している必要がある。いわゆる「がん告知」が重要となるのはこの理由による。 がん告知にはいくつかの要点がある。 ①がん告知は…

病理検査

病理検査はがんの最終診断で、一つは生検といって、根治療法を行なう前に微量の組織を小手術をしたり患部に針を刺すなどの方法で採取して診断を確定するのに使われる。もう一つは、切除された標本をホルマリンで固定した上で詳細に調べることによって、どん…

遺伝子診断

がんが遺伝子の病気であることから、特定のがん遺伝子産物である蛋白質を血液や組織の中で検出し、治療計画に役立てたり、早期発見につながる新たな物質が見つかる可能性もある。すでにかなり実用化されているものの一つに、乳がんの予後を判定する上で、切…

腫瘍マーカー診断

腫瘍マーカーによる診断ぽがん細胞が分泌する微量の物質を血液や尿、便などの中に検出し、治療効果の判定やがんの病期診断に役立てようとするものである。現在、日常の臨床で使われている腫瘍マーカーを表6にまとめた。これらのマーカーの多くは、手術や化…

内視鏡検査

内視鏡検査は咽頭、喉頭、気管、気管支、食道、胃、十二指腸、脈管、大腸、腎盂、尿管、膀胱、関節の中などを、フレキシブルなファイバースコープや、棒状の硬性鏡を使って、腔内の観察を直接行なう方法で、わが国のお家芸の一つといえる。 国立がんセンター…

癌の画像診断:MRcP

診断の方法 がんの診断は画像診断、腫瘍マーカーによる診断、病理診断に大別することができる。これらの方法を組み合わせることによって、どの臓器に、どんな性質のがんが、どのくらい進んでいるがを精密に診断することになる。がんばそれを抱える一人ひとり…

リスク・ファクター

症状ががんの診断を進める上で犬切なことは間違いないが、もう一つ考えに入れておかなければならないのが、これまでの研究によって特定のがんとの関係が明らかにされたリスクーファクター(危険因子)である。診断を進める上ではその人の生活習慣や遺伝的背…

運動、知覚に関係する症状

脳腫瘍では頭が痛い、吐き気、嘔吐、物が二重に見えたり、目まいがするなどの視覚の異常、眼でとらえたものの一部に見えにくい部分が生じる視野の異常、手足の動きが不自由になったり、歩く際に片側に曲がってしまって真直ぐに歩けない、といった歩行障害な…

癌による各器官の症状

呼吸器の症状 咳、痰、とくに血痰、感染を伴えば発熱、呼吸困難、胸の痛みなどが代表的な症状である。脯がん、縦隔腫瘍、転移性肺がんなどがこれらの症状の原因となる。特殊な脯がんが、腕を支配する神経やその付近の肋骨などに広がると、腕の痛みや頸の付け…

がんの診断と症状

がんという病気は始めのうちは何の症状も伴わない。だから早い時期に見つけるのが難しい。がんがある程度進むと、そのがんが発生した臓器が本来もっていた働きを損なうことになるので、さまざまな症状が起こりうる。これを「がんの症状」としてまずまとめて…