放射線治療の効果と副作用:晩発障害

効果と副作用

 がんの多様性放射線治療の効果にも現れ、放射線療法がよく効く悪性リンパ腫やセミノーマ、中程度の効果を示す頭頸邵がんや子宮頸がん、逆にほとんど効果が期待できない肉腫などがある。相手となるがんの性質や広がりをよく見極めて放射線治療を加えると、形態と機能に影響を及ぼさないでがんが治療できる。これが放射線による治療法がもつ最大の利点といえる。

 しかし、一方で放射線障害、あるいは副作用、後遺症は大きな問題である。放射線治療を進めている最中に現れる障害は急性の、早期の副作用とよばれる。外照射を受ける際にいちばん目にっくのは皮膚の変化で、口腔内の治療の際は粘膜の変化も目で見える。皮膚の場合も、粘膜の場合も、まず発赤が起こり、ついで水疱形成、糜爛、潰瘍形成にまで進むこともある。現在はこうした副作用を減らすためのさまざまな工大がこらされているため、昔に比べると圧倒的に少なくはなったものの、避けられなし副作用の一つともいえる。こうした副作用があまりに強い場合には、照射を一時中断したり、線量を調節したりする。

 放射線をかける場所によって障害も異なる。腹部に照射すると吐き気や嘔吐、腸内の粘膜変化による下痢も起こりうる。広い範囲の照射を受けた後、数時間疲労感を強く訴える患者さんもあり、治療後の安静も大切である。食道に照射すると、線量が増えてくると食事に際しての痛みが強くなったり、一時的に嚥下困難が生ずる場合もある。頭に照射すると髪の毛が抜けたり、頭蓋内圧が高くなったりすることもある。放射線をかけている場所によって各々独特の急性の副作用が起こりうるので、医療者も患者さんも毎日状態に注意をはらうことが必要である。


晩発障害

治療後六ヵ月以上たって現れる障害、後遺症は晩発障害とよばれており、ときには何年も、何十年もたって現れたり続いたりすることがある。一般に放射線の総量をふやせばふやすほどがんが治る可能性は高くなるが、晩発障害が発生する可能性も高くなる。眼に放射線をかけた場合は白内障が、脳にかけた場合には脳細胞が損なわれた結果としての脳萎縮、囗腔付近にかけた場合には歯や顎骨が壊死を起こしたり、味覚の障害や唾液が出なくなるなど、さまざまな反応が起こりうる。肺に照射した後の肺線維症、腹部にかけた後の腸の癒着による腸閉塞、膀胱炎や直腸炎もある。あげていくと恐ろしいような病状が次々と並べたてられ、とてもそんな治療を受ける気がしなくなるほどだが、近年はこうした障害を減らすための技術進歩もいちじるしいこともぜひ知っていただきたいと思う。