化学療法が有効ながん、効きにくいがん

 

 化学療法に対する反応性はがんの種類によって大きく異なる。また同じがんの中でも、生物学的にはまったく異なった疾患として取り扱ったほうがよいものがある。たとえば肺がんの中の小細胞がんと非小緇胞がんがある。非小緇胞がんに分類される扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんなどは、二言で肺がんと卜ってもお互いに生物学的性質が大きく異なり、化学療法に対する反応性でも小細胞がんとは大きな違いを示す。白血病の中の急性白血病と慢性白血病でも同じようなことがいえる。

 新しい抗がん剤が導入されたり、新し卜抗がん剤の組合せの有効性が証明されたりして、化学療法によるがんの治療効果は時代とともに変わってきた。化学療法が非常によく効くがん(著効群)、有効ながん、やや有効ながん、ほとんど効果が認められないがん(無効群)、に分類してみる。急性白血病悪性リンパ腫、睾丸腫瘍などに対する抗がん剤の切れ味の鋭さは、腎がん、胆道がん、膵がんなどで経験する治療困難性ときわだった対照をなしている。白血病悪性リンパ腫に対しては何種類もの抗がん剤を組み合わせることにより、治療効果をあげ副作用を減らす工大がされている。多剤併用療法とよばれる・まず導入療法を何回か行ないヽがんが消滅した後毛強化療法で念を入れるヽといった治療 のしかたが一般的である。

 固形がんである睾丸腫瘍の化学療法が、時代とともに有効性を増してきた歴史を考えると、現在治療に難渋している腎がんとか膵がんといった固形がんの治療にあたる医師にとっては大きな希望、励みとなる。日本人に多い胃がんや大腸がん、肝がんと卜った消化器がんに対する化学療法の効果も満足できるものではない。私たちが苦し卜戦卜に、地味なむくわれることの少ない努力をしながら、患者さんのためにじっくりと取り組むべき研究課題のひとつと卜える。