大量化学療法と骨髄移植、末梢血幹細胞移植

 

 抗がん剤がよく効くがんで、しかし普通の量の化学療法では治せないようながんに対して、通常量の三倍から十数倍の抗がん剤を投与して治そうとする治療法である。急性白血病慢性骨髄性白血病悪性リンパ腫などが主な対象である。乳がんや睾丸腫瘍にも使われる場介がある。大量化学療法を行なうと、骨髄細胞も消滅してしまう。細菌やウイルス、カビなどの感染に極度に弱い状態の患者さんを無菌室に収容し、約二週間、患者さんを感染症から保護する。この間にあらかじめ準備しておいた骨髄細胞を解凍して巫者さんに点滴でもどす。他人の骨髄を使った同種骨髄移植と、患者さん本人の骨髄を使う自家骨髄移植がある。移植した骨髄細胞が、空になった患者さんの骨髄に生着するのを促すために薬を使い、移植した骨髄細胞がうまく生着して白血球や血小板が増加してきたら、患者さんは一般病室にもどることができる。

 最近は、末梢血幹細胞移植といって、骨髄から末梢血の中に出てきた骨髄の白血球などに分化できる幹細胞の数をG-CSF薬を使ってなるべく増やしておく。この末梢血中の幹細胞をあらかじめ血液からとり出して凍結しておき、これを患者さんにもどす方法も行なわれるようになってきた。いずれの場合でも、骨髄毒性を無視して、大量あるいは超大量化学療法を実施し、骨髄機能がゼロの時期を無菌室でやりすごして、途中で骨髄細胞あるいは幹細胞を移植することによって、治療困難だった難治性白血病悪性リンパ腫などが治るようになってきた。

 これらの治療は患者さんや家族の肉体的、構神的苦痛はもちろん、医療者にとっても努力を要する治療であり、医療費の面でも問題をかかえている。しかし、従来の方法では洽すことができなかったがんが治せるということも重要な事実であり、発展の一過程と考え、さらなる改善を探る必要があるだろう。