リスク・ファクター

 

 症状ががんの診断を進める上で犬切なことは間違いないが、もう一つ考えに入れておかなければならないのが、これまでの研究によって特定のがんとの関係が明らかにされたリスクーファクター(危険因子)である。診断を進める上ではその人の生活習慣や遺伝的背景、年齢といった要素もリスク・ファクターとして考慮に入れる必要がある。たとえば喫煙習慣、タバJは肺がんにも、喉頭がんや咽頭がんにも、食道がんにも深く関係する。

 とりわけ、タバコを永年にわたってたくさん吸い、強いアルコールを好んで飲む人は食道がん喉頭がん、咽頭がんなどの危険性が非常に高くなる。肺、頭頸部、食道は空気、あるいは食物を通じて外部の環境に直接さらされていることからも、相互に深く関連した一連の臓器としてとらえてがんの危険性を考える必要がある。

 ヘリコバクターピロリという胃の粘膜の中に棲息する細菌がいる。酸性の胃液の中でも棲息できる変わった細菌である。この菌の感染と胃がんの関係に最近注意が払われており、胃の
内視鏡検査や血液検査によってヘリコバクター・ピロリ感染が見つかった場合には胃がんのリスターファクターの一つとして考えたほうがよい、とする研究がある。

 日本人の肝がんはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染と深く関係している。とくにC型肝炎ウイルスに感染すると、その一部の人は慢性肝炎↓肝硬変↓肝がんと進行することがわかっており、この関係は重要である。慢性肝炎や肝硬変の診断を受けた人たちはaフェトプロテインとよばれる腫瘍マーカー(後述)と、腹部の超音波検査を定期的に受けることによって早い段階で肝がんを発見することが大切である。

 やや若年の年齢ががんの発生に深く関係するものとしては、前にも述べたように骨肉腫や睾丸腫蕩がある。このほかに、小児に発生する白血病網膜芽細胞腫や、神経芽細胞腫、ウルムス腫瘍なども年齢がとくに重要な悪性腫瘍の代表である。逆に、前立腺がんは高齢者に発生するがんの代表の一つといえる。