肺線維症の診断:HRCT

 

 肺線維症の診断は、話をくわしく聞き、体を診察することによって、かなり迫ることができます。

 検査では、胸部の単純レントゲン写真、CT写真がかなりの決め手となります。胸部レントゲン写真には、ふつう見られないような不規則な網目状の変化が見られることが多く、何よりも横隔膜は上方にせり上がっていて、肺の容積が全体として縮まっていることが特徴的です。しかし、約一〇%の人では、肺線維症の病変があるのに胸部レントゲン写真では異常がみとめられません。

 CT写真も診断の有力な方法です。最近では高解像力をもつCTが使われるようになってきました(HRCTと呼ばれています)。これによると、肺線維症が強い部分は、直径が二~二〇ミリていどのハチの巣状の変化が胸膜の直下でしかも肺の下方、横隔膜に近い部位で見られることが特徴です。ふつうのCTでは診断率は三〇%前後ですが、HRCTでは肺線維症の九〇%が診断されます。

 タバコを長く喫っていた人では、ハチの巣状の変化が肺気腫の穴ぼこ状の変化と紛らわしく、ときには両方が混在していることもあり、わかりにくいことがあります。(チの巣状の変化をしめす部位は、肺線維症ができあかってしまった、火事でいえば火が消えてしまった焼け跡のようなものですが、いま燃えさかっている部位では、すりガラスのようにみとめられ、この部分が多いほど病勢がなお活発であると疑います。このようにCT検査は、肺線維症の診断には欠くことができない方法です。

 重症度を決めるためには、肺機能検査をおこないます。肺の容積が正常にくらべてどのていど縮んでいるか、また一酸化炭素が血球のヘモグロビンに結びつきやすいことを利用しておこなう肺拡散能という検査法は、早期の病変を見つけるのに有効とされています。動脈の中の酸 素分圧が正常に保たれているか、減少しているかを知ることも大切です。さらに最近では、パルスオキシメーターという機器を用いて、血液を採らずに皮膚の上から測定し、歩行したときに酸素がどのくらい低下するかなどをかんたんに知ることができます。

 その他の検査方法では、先に述べた気管支肺胞洗浄法、放射性同位元素のガリウムを注射し、肺にどのくらい取りこまれるかによって病勢の活動性をみる方法があります。診断が確定せず治療方針が立てにくい場合には、やむをえず手術して、肺の病変部位を一部とってきて顕微鏡で見て診断をつけるという方法がとられることもあります。