ペプチド核酸

 

 ペプチド核酸(PNA : peptide nucleic acid)はタンパク質を構成するアミノ酸の連なった分子でありながら,核酸と類似の性質を持たせた新しいバイオ分子である. PNAの基本骨格は,特殊なアミノ酸である2-アミノエチルグリシンが,ペプチド結合により連なることで構成されている.このPNAにおけるペプチド結合の立体構造や化学的性質は, DNAにおける糖・リン酸部分の骨格構造と驚くほど類似している.それゆえ, DNAにおいて塩基の占める位置に相当するPNAの場所に4種類の塩基を適当に配置すれば, DNAにそっくりのPNA分子鎖ができあがる.このPNAの持つ塩基は, DNAやRNAの持つ塩基と塩基間の水素結合を形成してDNA・PNA混成物(ハイブリッド)をつくることができるため, PNAをDNAと同じ感覚で用いることが可能である.それどころかPNAは以下に列挙するようなDNAにはないいくつかの有利な点を持ち合わせている.0酸性のDNAに対してPNAは中性であること. c PNAはDNΛより水溶液によく溶解するためDNAでは困難であった高濃度で使用できること,@核酸分解酵素の基質にならないため分解されないこと,0より高温でも安定なDNA・PNA混成物(ハイブリッド)を形成できることである.これらの性質から,アンチセンスPNAとして用いれば医薬品に有用であろうと期待されている.