アポクリン汗器官起原性腫瘍

 

1.アポクリン汗嚢腫apocrine hidrocystoma 〔Smith 1974〕

   [同義語]アポクリン嚢胞腺腫apocrine cystadenoma 〔Mehregan 1964〕

   〔症状〕顔面〔とくに眼囲〕・耳・頭皮部に好発、単発性、半球状隆起性、透明ないし青色調〔メラニン・リポフスチンによる色〕の小結節.陰茎腹側・亀頭に生じたものを陰茎縫線嚢腫(median raphe cyst of the penis・)という.

  〔組織所見〕真皮内に大きな嚢腫構造あり.断頭分泌を示す1層の円柱状と、その外側の筋上皮細胞より成る.貯留嚢腫ではなく腺腫と考えられる.

2.乳頭状汗腺腫hidradenoma papilliferum

  大陰唇・会陰〔まれに乳頭・上眼険〕に単発する径10 mm までの半球状の、常色ないし淡紅色の腫瘍で、嚢腫内に複雑に絨毛状の凹凸があり、管状~嚢腫状構造にみえる.1層の核の明るい、断頭分泌を示す円柱状細胞が壁を形成し、その外側に筋上皮細胞様細胞がみられる.アポクリン汗腺の嚢腫.

3.乳頭状汗管嚢胞腺腫syringocystadenoma papilliferum

 〔旧名〕乳頭状汗管腺腫母斑naevus syringoadenomatosus papilliferus

 〔症状〕頭顔部に、出生時から思春期頃に発する単発性疣贅状腫瘍.思春期に増大することあり、また1/3が脂腺母斑に続発してくる.

 〔組織所見〕表皮より嚢胞構造が下方へ宵入、一部壁は角化細胞で被われる.真皮では大小の嚢胞かあり、絨毛状に壁が内腔に突出して乳頭状を示す.壁は2層の細胞より成り、管腔側は断頭分泌を示し、外側は小さい四角い筋上皮細胞様細胞より成る.エクリン汗器官由来説もあり、最近ではいわゆるアポエクリン汗腺由来も考えられている.

 〔予後〕約10%に基底細胞腫を続発.

4.円柱腫cylindroma

 〔同義語〕シュピーグラー腫瘍Spiegler's tumor、ターバン腫瘍turban tumor

 〔症状〕頭部、まれに体幹・四肢に、思春期頃から豌豆大から手拳大の、半球状ないし軽度有茎性の、正常皮膚色~淡糺~褐色の、大小の腫瘤が多発.頭部全体を侵すと、ブドウの房やターバン状にみえる.単発もある.まれに悪性化.

 [遺伝]多発型は常染色体性優性遺伝で、しばしば毛包上皮腫と併発.

 〔組織所見〕島嶼状に大小の腫瘍細胞塊.それを取巻くヒアリン鞘と結合組織.明るく大きい核を有する細胞が中央に、濃い小さい核を有する基底細胞腫細胞様細胞が周辺に並び、中心が管腔となる部分もある.

 〔病因〕アポクリン説が強いがエクリン説も主張されている.