レーザー・トレラ症候群、稗粒腫

 

 レーザー・トレラ症候群Leser-Trelat syndrome : 数ヵ月のうちに老人性疣贅・老人性色素斑が急速に多発、かつ皮膚 痒症を伴うもので、内臓悪性腫瘍の合併率が高い.しかし黒色表皮腫との合併も少なくなく、その疣贅のきわめて多い一亜型という考えもある.

 dermatosis papulosa nigra 〔Castellani 1925〕:黒人の顔面〔頬・耳前部〕にみられる〔成人の30%〕粟粒大の黒色小丘疹.組織像はメラニン沈着の著明な老人性疣贅の網状型に一致する.まれに日本人例.

 stucco keratosis : 踵・アキレス腱部ときに足背・前腕に生ずる3~10mm径の灰白色角化性丘疹で、鱗屑はこすると脱落し辺縁に襟飾状鱗屑を残す.

2.稗粒腫milium

 〔症状〕帽針頭大~粟粒大の白~黄白色の硬い小丘疹で、眼瞼部ついで頬・前額・陰茎・陰嚢・陰唇に多発〔原発性〕〔付図26-3].この他に類天疱瘡・先天性表皮水疱症・晩発歐皮膚ポルフィリン症・硬化性萎縮性苔癬・熱傷瘢痕・皮膚結核瘢痕・植皮部・皮膚削り術部・X線皮膚などに続発、のち自然退縮するものもある〔続発削.

 〔病因〕①原発吐:軟毛の漏斗部の母斑性過誤腫、②続発吐:破壊された汗管・毛包・脂腺導管・表皮の嚢腫状増殖.

 〔治療〕小尖刃刀で小孔をあけ、内容を圧出.

3.粉瘤atheroma〔表皮嚢腫epidermal cyst〕

 〔症状〕豌豆~鶏卵大の、半球状に隆起し、皮膚と癒着し、下床とは可動性の、弾性硬の皮内腫瘤〕.大きいときは波動を呈する.小切開を加えて圧迫すると悪臭ある粥状内容(Atherombrei)が排出される.ときに二次感染を来し、発赤して圧痛がある〔炎症性粉瘤(entztindliches Atherom)〕〔〕.被覆表皮または毛包漏斗部の嚢腫.

 〔組織所見〕上皮性嚢腫、しばしば周囲に異物反応.

 〔治療〕摘出.

4.外傷性上皮嚢腫traumatic epithelial cyst

  外傷により表皮の一部が真皮内に入り込み、嚢腫を形成したもので、臨床的には粉瘤に似る.石工・鍛冶屋などの手掌足底あるいは膝蓋に多い.

5.澄明細胞性棘細胞腫clear cell acanthoma 〔Degos 1962〕

円形、扁平にわずかに隆起した、淡紅色ないし黒褐色の小結節で、直径2cm以下、多くは下腿に単発、ときに多発する.魚鱗癬・静脈瘤その他乾癬・細菌感染巣・外傷部・虫剌部に生ずることもある.円形で透明な増殖した有棘細胞はグリコーゲンを多量に含み表皮・真皮内に好中球浸潤一海綿状態をみることも多い.真皮に毛細血管拡張あり.表皮細胞由来と思われるが、表皮内汗管由来・老人性疣贅亜型・炎症後偽腫瘍・過誤腫説などがある. pale cell acanthoma、 acanthome a cellules claires.

6. Bpidermolytic acanthoma

   扁平隆起性ないし疣贅状丘疹で常色~褐色を示し、ほぼ米粒大、中年以降の陰部を主とし体幹に好発.単発〔isolated e.a.Shapiro-Baraf 1970〕または多発〔disseminated e.a.Hirone-Fukushiro 1973〕.表皮表面の陥凹(cup shaped invagination)した表皮肥厚で顆粒変性を示す.