タンパク質工学

 

 遺伝子を試験管の中で改変することで,自然界にはない人エタンパク質を自在に設計して大量に製造するタンパク質工学が盛んになってきた. DNA化学合成やPCRを使えば遺伝子の塩基配列を一部分変化させることで産生されるタンパク質のアミノ酸を自在に変化できる.また2種類の異なるタンパク質をコードする遺伝子を融合して1つのタンパク質として発現させることも容易である.融合タンパク質の作製は大量生産したタンパク質を簡便に純化する目的にも重宝されている.たとえば対象とするタンパク質のN末端ではタンパク質の左側)にアミノ酸の一種であるヒスチジンを6個連続して発現させるよう,対象遺伝子の開始コドンのすぐあとに塩基配列を挿入した,ポリヒスチジン融合タンパク質発現系を取りあげてみよう.6個のヒスチジンはニッケルイオンにくっつきやすい性質を持つので,ニッケル樹脂と未精製の大腸菌抽出液を混ぜると,ポリヒスチジン融合タンパク質のみが樹脂に結合するため,他の混雑物と容易に分離できる.

 

 海産のオゾンクラブから単離された,緑色に光る蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質は,励起光をあてるだけで自己発光する.本来光るはずのない夕ンパク質が強く光るようになるため,予想外の応用研究が可能となり,近年大いにもてはやされている.細胞や個体を生かしたまま,外から導入した融合タンパク賈が光るのが顕微鏡下で観察できる.この技術によって対象タンパク質が本来存在すべき場所の特定や局在場所の経時変化の追跡が容易になった.また個体の中で大量に発現させることで蛍光マウスや蛍光熱帯魚など光る動物として肉眼でもみえるようにできる.動物愛護協会の叱責を受けなければバイオペットとしての需要はありうるかもしれない.